なぜフランス料理はお店によって料理名が同じなのに盛り付けが違うの?
私なりの回答です。
先ず、私が見習いの1980年代のお話です。古典フランス料理の教科書の代表は、エスコフィエの書いたギード・キュイニエール、モンタニエの書いたラルース、ルイ・ソールニエの書いたレペルトワール(まだまだ色々あります。)これが料理を作る上での基本ルセット、意味合い違いますが作業工程表的な物。これからはいらないと出来上がりが別物になります。
日本では、帝国ホテルの村上料理長、ホテルオークラの小野料理長(厳密に言うと初代は長峰料理長で小野ムッシュは二代目)、プリンスホテルの木沢料理長、その他、その前に田中徳三郎先生、志度先生(レストランシド)、荒田先生(レストランキャッスル、街場のシェフですがサリーワイル氏の弟子なのでニューグランド系)、その位の年代の料理からにしましょう!きりがありませんから。
もともとこの年代の料理は大きく分けて帝国、パレス、東京會舘系とニューグランド系の料理に分かれていますね。要するにベースはフランスで修業して日本で育った伝統的な西洋料理とスイスからとわいえサリーワイルシェフからの直伝のフランス料理ですね。(ドリアなんかそうですね)その他、当時の街場のレストラン。(私たちの年代ではどちらかに属していると思います。まだまだイタリア料理店が少なかった時代でホテルでさえ本格イタリア料理店を直営にしたのが80年代中頃の浅草ビューホテルでした。当時の本場で修業された海鋒料理長のイタリア料理は格別でした)
その後、新しいホテルが次々と開業して引き抜きが行われてその部下が料理長に就任し料理が派生していきました。その例がパシフィックホテル、新宿のセンチュリーハイアット、ロイヤルパーク等など、そして70年代にヨーロッパで修業した料理人が帰国して街場のレストランが次々とオープンしてその当時の最先端のお料理がレストランで提供されていました。例えば、ランブロワジーの赤ピーマンのムース、元をたどればヴィヴァロアのクロード ペローの赤ピーマンのヴァヴァロアです。80年半ばころから日本の街場のレストランでどこでも提供されるようになりました。そして言葉は悪いですがコピーされるようになりました。一流のシェフが作るから似た様な物が出来ますが修行、経験のない人ではシンプルが故に別物になる料理ですね!フランス料理でもイタリア料理でもa laなんとかとか何々風とかその時代や歴史上の人物が好んで食べた物や地名が多いです。(基本ホテルとかで大量生産する料理はこういうメニューが多いです。例えばTournedos Opera(トルネード オペラ)という料理、エスコフィエの書いた辞書にはsauter les tournedos(トルネードをソテーする)dresser sur croutes de tartelette garnies de foie de volaille sautes madereと記載されています。この時にスタッフは、何を用意してどのようにするかルセットにそってスタンバイします。要するに牛フィレのトルネードという部位を用意、ガルニチュールでチキンレバーをマデラワインで炒めた物をタルトレット中に詰め周囲に(Entourer avec les croustades garnies pointes d aspergeliees liees au beurre)アスパラガスの穂先をbutterでリエゾンしたものを添えると書いてあります。その係の者は迅速にスタンバイします。(これが一流ホテルの一流のスタッフです。見習いのころからこのように教育されます。)このように料理辞書に出てくる料理ではないと職場の統率が図れないし大量生産が出来ないという理由ですね。ホテルの巨大厨房では肉を切る部門、それを焼く部門、そのソースを作る部門、付け合わせを作る部門、お皿を用意する部門これが料理長の書いたメニューと厨房内の発注書、伝票から振り分けられ盛り付けで一つになりお料理として提供されます。その道のスペシャリストです。これが基本!)そうなると前に述べたようにホテルの系統により使う食材の部位、また微妙に盛り付け等変わってきます。
また、街場のお料理は作る数が少量の為と一つのお料理に対してほとんど一人で作業をするので(肉担当、魚担当、前菜担当位は分かれています)その時の最高の状態のお料理をお作りする事が可能ですね。
早い話、昔からの教科書どうりのホテルの料理(系統により異なる) と作る時点で最高の食材で若干のアレンジができる現代風に変化させた料理で名前は一緒ですがお皿の上のお料理は変わってきますね!
ちなみに私の料理のベースはオークラ、プリンス系からくるニューグランド系です。
ですから私は、帝国ホテルのシャリアピンステーキもバイキングという 言葉も使った事はありませんし、HPでも宇都宮のどこどこではこうでしたとお客様から言われてもわかりません。働いた事ないですからと書いております!!
お客様も納得です。
注、バイキングという言葉は帝国ホテルの言葉で他のホテルでは使いません。当時の犬丸社長と村上料理長が営業企画会議で、その頃上映されていた映画で海賊たちがたらふく食べている姿を見てこの言葉が採用され、現在に至ると記憶しております。いわいるスカンジナビア方面で言われているスモーガスボードですね。日本でしか通じない言葉です。
しかし地方のホテル、温泉旅館に行くとこの言葉の方がメジャーですね!!
おせっかいな私は地方に行くといつもそこで働く従業員さんにやさしくそして丁寧に教えています。笑
コメントをお書きください